今回の取材は、これまでと立ち位置がまるで違います。

僕がこのサイトでやってきたレンタカー取材は、ずっと「借りて、楽しむ」ための記録でした。
でも今回借りた日産 フェアレディZ(RZ34)だけは違います。
これは数年後に自分で買うつもりでいる車を、買う前に24時間預かって、確かめにいった記録です。
数年後に購入しようとしている車。今までは事前にじっくり乗ってから買うとかしなかったし、今日はついにそれができる。
走ったのは351km、かかったお金は41,970円、実燃費は13.1km/Lでした。
そして先に結果を書いておきます。1日目、濃霧の山道を走り終えた僕がこの車について思ったことは「ただの重くてめんどくさい車だな」でした。ところが2日目、晴れた海沿いを走ったときの感想は「全く別の車で、快適そのもの」です。車は同じ、運転しているのも同じ僕。違ったのは道と天気だけでした。
もし1日で返していたら、僕はこの車を誤解したまま帰っていました。
18年間、僕は車を「確かめずに」買ってきました。
その結果どうなったかはゴルフGTIに7年乗って255万円減った話に書いたとおりです。
確かめずに買ってきた僕が、生まれて初めて買う前に確かめた。その24時間の全部を書きます。

千葉フォルニアの駐車場にて。※このエリアは路上に撮影禁止の看板があるので、駐車場に停めて撮りました。
なぜ「数年後に買う車」を、先に借りたのか

「試乗15分」では決められなかった
販売店の試乗は、たいてい15分から30分です。走るのは店の周りの決まったコース。信号があって、交通量があって、助手席には担当の方が座っている。
あの時間で分かるのは「乗り込んだときの気分」と「アクセルを踏んだ瞬間の感触」くらいだと、僕は思っています。雨は降りません。夜にもなりません。渋滞にもはまりません。高速の合流も、勾配のきつい山道も、荷物を積んだ状態も、ぜんぶ入ってこない。
でも実際に所有したら、その全部が毎日やってきます。
僕は今まで、確かめずに買ってきた
これまで4台、僕は車を所有してきました。
そのどれも、じっくり乗ってから決めたわけではありません。
確かめずに買って、そのたびに数字で払ってきた。
金額の話はゴルフGTIの7年間の記録にまとめてあるので、ここでは繰り返しません。
その反省が、このサイトの出発点になっています
(カーシェアか所有か、どちらがよいのかでも同じことを考えました)。
24時間借りれば、試乗では入ってこない条件がまとめて入ってきます。高速も、山道も、夜も、翌朝も。だから今回は24時間にしました。
借りたZと、24時間の実費41,970円

借りた個体
そしてもう一つ、今回は僕にとって節目の取材でもありました。このサイトで初めてのMT(マニュアル)車の取材です。これまで実走レビューを書いてきたコペンGR SPORTはCVT、GR86はAT。自分の左足と左手で操る車を丸一日預かるのは、今回が初めてでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車種 | ![]() 日産 フェアレディZ(RZ34) |
| グレード | Version ST |
| ボディカラー | 赤/黒ルーフ |
| トランスミッション | ![]() MT |
| タイヤ | ![]() 前 255/40R19 / 後 275/35R19 |
| タイヤ銘柄 | コンチネンタル マックスコンタクト7 |
| 借りた期間 | 2026/8/29(土)12:00 〜 8/30(日)12:00(24時間) |
| 借り先 | スカイレンタカー 羽田空港店 |
| 走行距離 | 29,529 → 29,880km(351km) |
僕が実際に借りた個体の記録です。同じプランでも個体は指定できません。
24時間の実費内訳
| 項目 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| レンタル料 | 28,170円 | 67% |
| 高速代 | 6,580円 | 16% |
| 給油(26.78L・ハイオク180円/L) | 4,820円 | 11% |
| 箱根ターンパイク | 1,100円 | 3% |
| 熱海ビーチライン | 600円 | 1% |
| 伊豆スカイライン | 500円 | 1% |
| 真鶴道路 | 200円 | 0.5% |
| 駐車場 | 0円 | 0% |
| 合計 | 41,970円 | 100% |
351km走って41,970円。1kmあたり119.6円でした。
405psのスポーツカーを24時間動かして、ガソリン代は4,820円。全体の11%です。
▶Z指定プランの料金を見る内訳の比率を見ると、思っていたのと違った
借りる前、僕がいちばん身構えていたのはガソリン代でした。405psという数字を見て、財布に効くのはそこだろうと勝手に思っていたからです。
実際は違いました。405psのスポーツカーを24時間動かして、ガソリン代は4,820円だった。351km走って26.78L、実燃費13.1km/L。全体のたった11%です。
いちばん重いのは当然レンタル料で28,170円、67%。そして意外に効いてくるのが有料道路で、高速代と各観光道路を足すと約21%になります。箱根ターンパイク1,100円、熱海ビーチライン600円、伊豆スカイライン500円、真鶴道路200円。ひとつひとつは小さいのに、束ねるとガソリン代の倍近くになる。
つまりこの手の車を借りるときにお金が動くのは、踏んだ量ではなく「どこを走ることにしたか」のほうでした。ルートを決めた時点で、費用の8割はもう決まっている。
借り方そのものについては
スカイレンタカーで面白い車を借りる方法
にまとめてあります。
今回と同じ羽田空港店の車種指定プランでは
新型エルグランドも9月4日から借りられるようになりました。
同じカウンター、同じ手続きです。
走り出しの10分、「ただの重くてめんどくさい車」だと思った
かけてもらっていたのに、自分でもう一度エンジンをかけた
羽田空港店のカウンターで手続きを終えて、駐車場に出ます。赤に黒いルーフのZが、こちらを向いて停まっていました。
お店の方が車両の説明をしてくださっている間、正直、頭の半分はもう運転席にありました。傷の確認、返却時のお願い、給油の説明。ちゃんと聞いています。聞いていますが、視線が何度もフロントまわりに戻ってしまう。
説明が終わった瞬間、僕はほとんど反射でドアを開けて、コックピットにもぐり込みました。

お店の方は気を利かせて、あらかじめエンジンをかけておいてくれていました。ありがたい配慮です。ありがたい配慮なんですが──僕は一度エンジンを切って、自分の手でもう一度かけ直しました。

メーターの始動アニメーションが見たかったからです。
目の前の画面が起き上がって、針が動いて、演出が流れて、Zが「起きる」。おおーっ、と声が出ました。いい歳をした大人が、レンタカーの駐車場で一人でやっているわけです。でも、この瞬間のためにわざわざこの車を指名して借りたようなところがあるので、これは省略できませんでした。
ここまでは、100点でした。
ところが、走り出した10分が退屈だった
店を出てから高速に乗るまでの約10分は、一般道です。それも交通量がそれなりに多い道。信号で止まって、進んで、また止まる。
その10分で僕が思ったことを、正直に書きます。
え、思ってたのと違う。これじゃただの重くてめんどくさい車じゃん。
まず、音が入ってきません。エンジン音もマフラー音も、ほとんど室内に届いてこない。遮音がしっかりしているということなんだと思います。快適です。快適なんですが、僕がこの車に期待して支払ったものの一部は、たぶんその音でした。
そして405psもある車なのに、変速のたびに音のないショックだけが体に伝わってくるのが、どうにも据わりが悪い。演出がないままの動作だけが残っている感じで、これには違和感すらありました。MTなので、その動作は10分のあいだに何度もやってきます。
救いになったのは、少しだけ回転を上げたときでした。そこでようやく滑らかなV6のサウンドが届いてきて、「ああ、いた」と思えた。ちょっと安心した、という感じです。
これは2例目だ ── GR86でも、同じことが起きた

この「見た瞬間は大満足、走り出したら退屈」という落差、僕は今年すでに一度経験しています。
GR86(AT)を24時間借りて房総を215km走ったときも、まったく同じでした。
対面したときのテンションは高いのに、街中を走り出すと静かで、
行儀がよくて、退屈に感じてしまう。あのときも理由は同じ、遮音が効きすぎていることでした。
違うメーカーの、違う成り立ちの車で、同じことが2回起きた。
だとすると、これは個体の話でも銘柄の話でもなくて、もう少し大きな話なのかもしれません。
現代の高性能スポーツカーは、街中では退屈になるようにできているのかもしれない。
2台では言い切れません。ただ、2台とも同じ場所でつまずいたことは、記録として残しておきます。
往路の高速は、コペンやGR86よりダントツで楽しかった

ここから先は、このサイトでしか書けない話をします。
僕はこの夏、コペンGR SPORT、GR86(AT)、そして今回のZを、
同じ人間が、同じ季節に、同じように24時間ずつ借りて実走しています。
乗り比べ企画としてまとめて借りたのではなく、1台ずつ、それぞれ丸一日かけて。
だから3台の記憶が、まだ全部生きた状態で手元にあります。
そのうえで書きます。
往路の高速(京浜、東名、西湘バイパス)の走行は、めちゃめちゃ楽しかった。少し広めの道だと、コペンやGR86よりもダントツで楽しい。
10分前に「重くてめんどくさい」と思っていた同じ車です。
それが、道が広くなって流れに乗った途端、まるで態度を変えました。
コペンは軽くて楽しい車でしたが、高速で渋滞につかまって大型車に挟まれたときは、
正直あまり心強くありませんでした。
GR86は逆に、3時間を超えたあたりから安心感が出てくるタイプでした。
Zはそのどちらとも違いました。広い道では、体がまったく忙しくない。
姿勢を保つのに気を遣わなくていいぶん、右足に意識を全部渡せる。
そして少し踏むと、待っていたものがちゃんと来ます。もりもりのトルクと、あのV6の音。

ただ、この2つについてはここでは深追いしません。この車の本当の顔は翌日に出てくるので、いまは「来た」とだけ書いておきます。
街中では「重い」だった同じ車が、広い道では「余裕がある」に変わる。この時点ですでに、Zは道によって違う顔を見せていました。僕がそれに気づくのは、もう少しあとになります。
箱根ターンパイクは濃霧。運転している僕が、自分で車酔いした

走ったルートと区間距離
| 区間 | 距離 | メモ |
|---|---|---|
| 羽田空港店 → 千葉フォルニア | 51km | 撮影&最初の休憩 |
| 千葉フォルニア → 箱根ターンパイク小田原入口 | 80km | 京浜・東名・西湘バイパス。ここが楽しかった |
| 箱根ターンパイク(小田原入口→大観山) | 14km | 公称13.8kmとほぼ一致。濃霧 |
| 大観山 → 芦ノ湖 → 箱根峠 → 熱海峠 → 伊豆スカイライン(亀石峠で離脱)→ ホテル | 36km | 霧が晴れず。予定を切り上げ |
| 【2日目】ホテル → 返却 | 170km | ここで全部がひっくり返る |
伊豆スカイラインは熱海峠から天城高原までの約40.6kmを走る予定でした。亀石峠で降りています(料金500円)。
濃霧のターンパイク14km
小田原の入口で1,100円を払って、箱根ターンパイクに入りました。
ここを走るのを、僕はかなり楽しみにしていました。
頭文字Dの聖地ですからね。
ところが入って早々、濃霧でした。
登るほど濃くなって、先が見えません。当然、速度は出せません。出す気にもなりません。
前の車のテールランプと、路肩の白線と、ガードレールの切れ目を頼りに、ゆっくり登っていくだけの14kmになりました。
だから、ここでもまた思ったんです。
重くてめんどくさい車だな。
坂はきつい。でもこの車は、少し踏めば勾配なんて関係ないという感じで前に出ます。
問題はそのあとでした。
MTなので変速のたびにクラッチを踏む。すると車が重いぶん、速度がすっと落ちる。
つなぎ直すと、またとてつもない力で加速する。
落ちて、押されて、落ちて、押される。
登り坂とMTと重い車。この組み合わせで、体は前後にずっと揺すられ続けることになります。
運転している僕が、自分で車酔いした
その縦の揺れと、霧で進む先が見えない状況が重なったところで、はっきり気持ち悪くなりました。
運転者である僕が、自分の運転で車酔いしたんです。
自分でハンドルを握っていると普通は酔いません。
次に何が起きるかを自分で決めているからです。
ところがこのときは、目から入ってくる情報が霧でほとんど無いのに、
体だけが前後に振られ続けている。
決めているはずなのに、見えていない。
この状態がしばらく続くと、こうなるんだと初めて知りました。
このサイトには、すでに乗り物酔いという軸があります。
コペンGR SPORT・N-BOX・RAV4の3台を走らせた記事で、
同乗者がどう酔うかを比べました。
今回そこに、運転者側のデータが1件加わりました。
同乗者ではなく、運転している本人が酔う。軸が一段広がったことになります。
それでも、大観山は「到達感がすごかった」

気持ち悪いまま、なんとか大観山にたどり着きました。
着いてみると、駐車場にはスポーツカーがたくさん停まっていました。イニシャルDの聖地とされている場所です。霧で景色は何も見えないのに、それでも人が集まって、みんな自分の車の横に立っている。
到達感は、すごく感じました。
体はしんどい。景色はない。
それでも「ここまで来た」という感触だけは、はっきり残っています。
この日の1日目で唯一、素直に良かったと言える瞬間でした。
なお9月には、同じ箱根・伊豆のルートに
シビックType R(FL5)と新型プレリュードを持ち込む予定です。
同じ道を別の車で走れば、今回の「重さ」がZ固有のものなのかどうかが見えてくるはずです。
伊豆スカイラインは、走り切れませんでした
大観山から芦ノ湖に下りて、箱根峠を越え、熱海峠から伊豆スカイラインに入りました。
料金は500円です。
予定では、ここから天城高原まで約40.6kmを走り切るつもりでした。
1日目の締めくくりとして、いちばん楽しみにしていた区間です。
霧は、全く晴れませんでした。
稜線の上を走る道なので、本来なら左右が開けているはずです。
その日は、開けているはずの方向が全部白でした。前も白い。
車酔いは治まらず、むしろじわじわ悪くなっていく。
気合で乗り切る、という表現がいちばん近い走り方をしていました。
そして亀石峠で降りました。予定していた距離の、およそ半分です。
残りを走ることもできました。時間もありました。
でも、そこから先を走っても、僕は道を見ずに白を見続けるだけだったと思います。
そのままホテルに向かいました。
この一日では、ただ酔って疲れただけに終わりました。

ホテルの駐車場に停めて、エンジンを切ったときの気持ちを、そのまま書いておきます。
Zで悪天候の中、山道を走るのはものすごく不快だった。
誤解のないように書いておくと、これは車が悪いという話ではありません。
悪かったのは条件のほうです。濃霧、登りの山道、視界がない状態でのMT操作。
この3つが重なったときに、この車は僕にとってしんどい車になった。それだけのことです。
でも、これは書いておかないといけない。この車には、僕がしんどくなる条件が確かに存在する。
そしてここが、この日の意味です。
数年後に買うつもりでいる車の弱点を、買う前に見つけた。
これは失敗の記録じゃなくて、目的が果たされた記録です。
試乗15分では、濃霧の山道は入ってきません。24時間借りたから入ってきた。
それが今回の1日目でした。
2日目、R135。同じ車が、全く別の車になった

朝、体調は回復していた
ホテルで目が覚めて、まず確認したのは自分の体調でした。
前日は濃霧の山道で自分の運転で酔って、
伊豆スカイラインを亀石峠で降りて宿に逃げ込んだところで終わっています。
正直、朝起きた時点でまだ気持ち悪かったら、そのまま高速で羽田に戻って返すつもりでした。
結果から言うと、体調は回復していました。
カーテンを開けたら、前日の霧が嘘みたいに海が見えている。
「これは、昨日の続きをやらせてもらえるんだな」と思って、
荷物をまとめて駐車場に降りました。
この時点での僕のZに対する評価は、まだ「重くてめんどくさい車」のままです。
高速はめちゃめちゃ楽しかった。でもそれ以外の場面では、正直ずっと持て余していました。
24時間のうち、残っているのはあと4時間もありません。
海沿いのR135で起きたこと

宿を出て、海沿いのR135を走り出しました。走行心地が、1日目とは全く別でした。
快適そのもの、という言葉がいちばん近い。
同じ車に乗っているという感覚が、しばらく戻ってきませんでした。
まず、どこからでももりもりとトルクが出てくる。
アクセルを大きく踏み込まなくても、踏んだ分だけ前に出る。
前日の一般道では「重い」としか感じなかった車体が、
海沿いの見通しのいい道では、その重さがそのまま安定感として足の裏に返ってきます。
タイヤは前が255/40R19、後ろが275/35R19の
コンチネンタル マックスコンタクト7が組まれていました。
銘柄を知っていたから、というより、
走っていて「がっちり安定してグリップしている」のが手とお尻から分かるという感じです。
前日、霧の中で何も見えないまま曲がっていたときには、この感覚は一度も出てきませんでした。
見えているというだけで、ここまで別の車になるのか、と思いました。
そして、そのグリップを感じながら旋回していると、
V6の心地よいエンジンサウンドが聞こえてくる。
前日は「遮音が効きすぎていて何も聞こえない」と文句を言っていたのに、
この日はちゃんと届いてくる。たぶん、こちらの余裕の問題です。
酔って必死になっているときには、音を聴く耳が残っていなかった。
この日は途中で熱海ビーチライン(600円)と真鶴道路(200円)を使いました。合わせて800円。
海沿いを気持ちよくつないでいくための800円としては、僕はまったく惜しくなかったです。
シンクロレブコントロールが病みつきになった
2日目でいちばん強く印象に残ったのは、実は景色でも音でもなくて、
シフトダウンの気持ちよさでした。

このZには、シフトダウンのときに回転を合わせてくれる機能(シンクロレブコントロール)が付いています。仕組みの解説は僕にはできません。できるのは、「使ってみたらどうだったか」を書くことだけです。
結論として、かなり優秀でした。
(運転の素人の僕が扱うには、という前置きつきです)
ギアを落としたときに、ガクンという突き上げが来ない。
綺麗に、ショックなく決まる。
最初のうちは「勝手に合わせてくれているな」くらいの感想だったのが、
慣れてくると、コーナーの手前でシフトを落とすこと自体が目的になってくる。
これは病みつきになります。
僕は運転がうまい人間ではありません。
だからこそ、こういう機能に助けられた実感があります。
うまい人が自分で回転を合わせる喜びを奪われるのかどうかは、僕には分かりません。
僕に分かるのは、素人が乗っても、シフトダウンが気持ちいい車だったということだけです。
そして、ここで初めてこう思いました。
この車はMTだと所有向きかもしれないな、と。
借りている24時間のうち、この感覚を味わえたのはほんの数時間です。
でも、これが毎週末あるなら、話は変わってきます。
この車は「GT的に走る」のがベストかもしれない
2日間を通しての僕の結論は、
この車はGT的に走るのがベストな使い方かな(僕的には)、というものでした。
細かい山道をヒラヒラと曲がっていく車ではない、と僕は感じました。
少なくとも、前日の霧の伊豆スカイラインでは、この車の良さは一つも出てきませんでした。
広めの道を、遠くまで、気持ちよく移動する。
そういう使い方をしたときに、トルクも、安定感も、音も、シフトの気持ちよさも、
全部が同じ方向を向く。そういう車だと思いました。
そう考えると、1日目の高速で「コペンやGR86よりもダントツで楽しい」と思ったのも、
2日目のR135が快適そのものだったのも、同じ話です。
道が広いかどうか。それだけで、この車の評価はひっくり返ります。
実は、こういう「途中で評価がひっくり返る」経験は2台目です。
GR86(AT)を房総で借りたとき
も、最初は良さが分からなくて、
3時間を過ぎたあたりから「余裕代」の意味が分かってきました。
ただ、反転の理由がまったく違います。GR86は時間で反転しました。
Zは天気と道で反転しました。GR86は乗り続ければ分かる。
Zは、乗り続けても霧の山道のままなら、たぶん最後まで分からなかった。
だからこそ、これだけは書いておきたいと思います。
1日で返していたら、僕はこの車を「重くてめんどくさい車」のまま返していました。
24時間借りるというのは、こういうことだったんです。
24時間つきあって見えた、装備の話
SKYが付けてくれていたもの
ここからは、走りとは別の話です。24時間乗ったからこそ気づいた装備の話を、良かったものも、そうでなかったものも並べます。
まず、この個体にはSKY側で後付けしてくれていた装備が2つありました。これが、想像以上に効きました。

1つ目がデジタルインナーミラーです。
ここには順番があります。RZ34にはリヤワイパーが付いていません。
そして1日目は雨でした。つまり、後ろのガラスは濡れたまま、拭う手段がない。
普通のミラーだったら、後方の状況は正直かなり分かりにくかったはずです。
そこを埋めてくれたのが、後付けのデジタルインナーミラーでした。
解像度が高く、雨の中でも後ろがはっきり見えた。これは非常にありがたかったです。
「装備が豪華で嬉しい」ではなくて、
「この車のこの弱点を、この装備がちょうど埋めている」という埋まり方をしていました。


2つ目が左足のニーパッド(ミニクッション)です。
純正のコンソール側にもパッドは付いているのですが、
そこにさらに柔らかいものが足されていました。
MTなので左足はクラッチを踏み続けます。
その左足を、めちゃめちゃ守ってくれました。快適さがまるで違います。
この2つは、たぶんZを何度も貸し出してきた中で
「ここが必要になる」と分かった上で付けられているんだと思います。
スカイレンタカーを実際に使ってみた正直な感想
でも書きましたが、
こういう気遣いが装備というかたちで残っているのは、僕にとってはかなり大きい評価点です。
シフト操作で左ひじが当たる ── ドリンクホルダーの話
逆に、24時間つきあっていちばん気になったのがドリンクホルダーでした。
これは、5分の試乗ではまず出てこない話です。
センターコンソールにドリンクホルダーがあります。
ここに背の高い飲み物を挿すと、シフト操作のたびに左ひじが当たります。
1回や2回なら気になりません。
でも、渋滞で何十回もシフトを動かしていると、これがかなりストレスになる。
ここで大事なのは、これはMTでしか出ない話だということです。
ATなら左手はシフトをほとんど動かしません。
左ひじの軌跡がそもそも存在しないので、同じ位置に同じ飲み物を置いても、たぶん何も起きない。
MTを借りる人だけが踏む地雷です。

で、僕はこのサイトでは「不満で終わらせない」と決めているので、対策まで書きます。
答えはシンプルで、コンソール側には280ml以下の背の低いものだけを置く。
400ml以上のペットボトルはドア側のホルダーに入れて、視界からも手の軌跡からも消す。
これで解決します。

そして、そう考えたときに気づいたんですが、
ドア側にドリンクホルダーを1個残してくれているのはファインプレーです。
スポーツカーはここを削ってくることがあります。残っていたから、僕は逃がす場所を持てました。
付いていてほしかったもの
逆に「あったらもっと良かった」も正直に書きます。リヤワイパーは、やはり欲しかった。オートワイパーも、間欠の多段階調整はあったので不便ではないのですが、自動で調整してくれたらもっと嬉しかったです。エアコンのダイヤルは、たぶん光るものが何も付いていませんでした。夜は手探りになります。

あと、これは完全に僕の好みですが、スマートキー。他の日産車と同じ形なので、Zの専用刻印なりなんなりで差別化してほしかった、と思いました。乗り込む前に手に持つものなので、ここは気分に直結します。
| 装備 | 判定 | 実際どうだったか |
|---|---|---|
| デジタルインナーミラー(SKYの後付け) | ◎ | 雨の中、リヤワイパーがない車での後方視界。高解像度が非常にありがたかった |
| 左足のニーパッド(SKYの後付け) | ◎ | 純正コンソールのパッドに加えて。左足をめちゃめちゃ守ってくれた |
| パワーシート+リクライニング | ○ | 小休憩レベルなら十分に快適 |
| Z専用フロアマット | ○ | 専用というだけで気分が上がる |
| センターコンソールのドリンクホルダー | △ | シフト操作で左ひじが当たる。280ml以下ならOK、400ml以上はドア側へ |
| ドア側のドリンクホルダー | ◎ | 1個残してくれたのはファインプレー |
| リヤワイパー | ×(非装備) | 雨の日はデジタルインナーミラー頼み |
| オートワイパー | △ | 間欠の多段階調整はあった。自動調整があればもっと嬉しい |
| エアコンダイヤルの光 | △ | たぶん何も付いていなかった |
| スマートキー | △ | Zの専用刻印など、他の日産車との差別化がほしかった |
装備は借りた個体(スカイレンタカー羽田空港店・2026年8月時点)のものです。後付け装備の有無は個体や時期によって変わる可能性があります。
▶Zの空車を同じ条件で借りられるか確認してみる6軸で採点してみた

このサイトでは、借りた車を毎回同じ6軸で採点しています。総合は「また借りたいか」です。
| 軸 | スコア | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 第一印象 | 5.0 | 説明が終わった瞬間に乗り込み、始動アニメーションを見たくてもう一度自分でかけた |
| ② 走りの楽しさ | 4.5 | 広い道ではコペンもGR86も超えてダントツ。ただし濃霧の山道では出番がなかった |
| ③ 長時間の安心感 | 4.0 | 2日目のGT的な走りは快適そのもの。ただし天気と道に左右される幅が大きい |
| ④ 快適性・疲れにくさ | 3.5 | 遮音とシートは優秀。ただし1日目は自分で酔って疲れ切った |
| ⑤ 実用性 | 2.5 | シフト操作で左ひじがドリンクホルダーに当たる。リヤワイパーなし |
| ⑥ 借りやすさ・コスパ | 3.0 | 24時間28,170円は3台の中でいちばん高い。ただし実燃費13.1km/Lは想像より良かった |
| また借りたいか | 5.0 | 「ATも近いうちにぜひ試してみよう」と返却直後に思った |
この表で僕がいちばん見てほしいのは、①第一印象の5.0と、⑤実用性の2.5の差です。
①は、鍵を受け取って5分で出る点数です。⑤は、24時間つきあわないと出てこない点数です。この2つを分けて書けるのは、24時間借りた人だけです。5分で分かる魅力と、1日つきあって出てくる現実は、別々に測らないと嘘になる。
そして、その両方を知ったうえで、総合(また借りたいか)は5.0でした。弱点が見えても下がらなかった、というのがこの車の答えです。
※星は僕個人の主観です。同じ道を走った条件で付けています。
コペン/GR86/Z ── 3台を実費で並べる
このサイトで実際に借りて、実費を全部公開してきた3台を並べます。
| 車種 | 実費 | 距離 | 円/km | 実燃費 | 変速機 |
|---|---|---|---|---|---|
![]() コペン GR SPORT | 28,030円 | 389km | 72.1円 | — | 7CVT |
![]() GR86(RZ) | 19,098円 | 215km | 88.8円 | 11.0km/L(ハイオク203円/L) | 6AT |
![]() フェアレディZ(RZ34・ST) | 41,970円 | 351km | 119.6円 | 13.1km/L(ハイオク180円/L) | 6MT |
RZ34は往路と帰路で250km以上を高速中心に走っています。
GR86は房総の一般道が主体です。同じ土俵の数字ではありません。
この表から読めることが2つあります。
1つ目。
円/kmがいちばん安いのはコペン(72.1円)で、いちばん高いのはZ(119.6円)です。
距離を稼ぐほど有利になるのは軽、という当たり前のことが、
自分の財布から出た数字ではっきり出ました。
コペン GR SPORTで房総を389km走った記録
のほうが、走った距離は多いのに実費は安い。
ここは動かしようがありません。
2つ目、こっちのほうが意外でした。
405psのV6ツインターボが、GR86より良い実燃費を出しています。
13.1km/L対11.0km/L。もちろん、これは条件差です。
Zは高速中心、GR86は房総の一般道中心なので、同じ物差しではありません。
ただ、「排気量が大きくてパワーがある=財布が即死する」という僕の思い込みは、
少なくとも高速主体の使い方では当たらなかった、というのは書いておきたいです。

ちなみに、90年代からのスポーツカーを「買うか、借りるか」で考えた話は
ネオクラスポーツカーなら買う?借りる?にまとめています。あわせてどうぞ。
それでも買う。むしろ、買い方の計画が具体的になった
借りる前と借りた後で、何が変わったか
この記事の最初に書いた通り、僕がZを借りたのは「数年後に買う車を、先に借りて確かめる」ためです。24時間走って、41,970円を払って、結論がどうなったか。
変わりませんでした。買おうと思います。

むしろ、はっきりしたのは気持ちの強さのほうでした。
V6ツインターボのエンジンには相当魅了されました。
久しぶりのV6でしたが、あの滑らかな音や振動には、毎度心を奪われます。
ここは1日目の霧の中でも、2日目のR135でも、変わらず良かった部分です。
そして、弱点も1つ、はっきり見つけました。
シフト操作で左ひじがドリンクホルダーに当たる。
笑ってしまうくらい小さい話ですが、これは24時間乗らないと出てこなかった話です。
弱点を知ったうえで、それでも買うと言える。これが僕の考える、本物の購入判断です。
知らないまま買って後から気づくのと、知ったうえで「そこは飲み物をドア側に置けば済む」と分かって買うのとでは、まるで違います。
MTとATを、用途で分けられないか
そして、借りる前には持っていなかった発想が出てきました。
僕の本命はATです。それは今も変わりません。
長い距離をGT的に流すなら、たぶんATのほうが合う。
2日目のR135で「この車はGT的に走るのがベスト」と感じたので、なおさらそう思います。
ただ、MTも欲しくなってしまいました。
シンクロレブコントロールで綺麗に決まるシフトダウンの気持ちよさは、
正直あれだけのために所有する理由になり得ます。
だから今、
MTは広いワインディングを楽しむ用、ATは遠距離ドライブ用、という持ち方ができないか
を模索し始めています。
これが、この24時間でいちばん大きな変化です。
借りる前の僕は「数年後にZを買う」としか言えませんでした。
24時間走ったあとの僕は「MTは広いワインディング用、ATは遠距離用」と言えるようになりました。弱点も一つ見つけました。減ったのは41,970円で、増えたのは「どう持つか」の設計図だったんです。
このサイトは「持てるまでの戦略をリアルに実践する」ことをテーマにしています。
18年で4台を乗り継いだ僕の記録を振り返っても、
いちばん失敗したのは「勢いで決めた」ときでした。
車にいくらまで使えるのかという話も、
こうやって具体的な車種と使い方が決まってからのほうが、はるかに現実的な計算になります。
買うか、借りるかの判断軸も、まさにこの41,970円のことだと僕は思っています。
同じZ(RZ34)を借りたい人へ
僕が今回借りたのは、スカイレンタカー羽田空港店の車種指定プランです。
24時間で28,170円でした。「Zに乗れたらいいな」ではなく、
「Zを予約する」ができるプランです。
ここが普通のレンタカーとの決定的な違いでした。
車種指定でどう予約するのかは
スカイレンタカーの車種指定プランの使い方にまとめてあります。
会社そのものの使用感は正直レビューのほうをどうぞ。
そして、僕が次に借りるのはATです。
この記事で書いた「MTは広い道、ATは遠距離」という仮説を、自分で確かめないと終われないので。
同じ羽田空港店には、
新型エルグランド、シビック タイプR(FL5)、新型プレリュード
など、同じように車種指定で狙える車が並んでいます。
気になっている車があるなら、僕と同じことをやってみてください。
買う前に、24時間だけ自分の生活に入れてみる。
それで見えるものは、試乗の30分とはまったく別物でした。
よくある質問
フェアレディZ(RZ34)はレンタカーで借りられますか?
僕はスカイレンタカー羽田空港店の車種指定プランで借りました。店舗差がありますがMTとATの設定があります。ただし在庫や取扱いは店舗・時期によって変わるので、予約サイトで最新の状況を確認してください。プランの使い方はこちらの記事にまとめています。
24時間でいくらかかりましたか?
レンタル料28,170円、高速6,580円、有料道路2,400円、給油4,820円で、合計41,970円でした。走行は351km、1kmあたり119.6円です。同じやり方で費用を全部公開しているGR86の記録と並べると、金額の感覚がつかみやすいと思います。
実燃費は? ハイオクですか?
ハイオクです。180円/Lで26.78L入って、実燃費は13.1km/Lでした。往復とも高速が中心の走り方です。参考までに、房総の一般道中心で走ったGR86は11.0km/Lでした。走った道がまるで違うので、そのまま比べられる数字ではありません。
MTとAT、どちらを借りるべき?
僕の実感では、広いワインディングを楽しむならMT、長距離をGT的に流すならATが合いそうです。MTはシフトダウンの気持ちよさが強い一方、シフト操作で左ひじがドリンクホルダーに当たる問題があります。ただATは僕自身がまだ未体験なので、次に借りて確かめます。
箱根・伊豆を回るなら日帰りでも足りますか?
僕は足りないと思います。1日目は濃霧で、伊豆スカイラインを亀石峠で離脱しました。
それが翌日は全く別の車になった。天気の当たり外れを吸収できることが24時間の価値です。
コペンで房総を走った記録でも、同じことを感じています。
まとめ
フェアレディZ(RZ34・ST・MT)を24時間借りた記録は、以上です。
実費41,970円。走行351km。そして、1日目と2日目で完全に別の車でした。
1日目、濃霧の伊豆スカイラインを亀石峠で降りた僕は、この車を「重くてめんどくさい車」だと思っていました。2日目、晴れたR135を走った僕は、この車のGT的な使い方に惚れ込んで、MTとATを両方持つ方法を考え始めていました。1日で返していたら、この記事は書けませんでした。
そして9月には、同じ箱根・伊豆のコースでシビック タイプR(FL5)と新型プレリュードを走らせる予定です。同じ道、同じ計測の仕方で並べていけば、そのうち「自分に合う1台」の輪郭が数字で見えてくるはずです。買う前にやっておくことが、まだ僕には残っています。
※星は僕個人の主観です。同じ道を走った条件で付けています。







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